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新英語教育研究会神奈川支部HP

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2000.11 会報82:英語劇4年間のまとめ

2000年11月(会報No.82)
●実践報告(高校):「4年間の英語劇の指導を振り返る」
萩原 一郎さん(港北高校)

◆ 過去4年間、生徒と一緒に作りあげ、文化祭で発表してきた英語劇。物理的な制作進行だけでなく、《ささやき作戦》など「生徒の気持ちづくり」の工夫にご注目下さい。

(1)  授業
◆3年選択「オーラルA」(俗称「英会話」)のメンバーで英語劇をやるのは本校文化祭の定番としてすっかり定着した。今年は15名。2クラス(8名と7名)に分けて授業。昨年までは、一人で担当してきたが、来年以降の引き継ぎの意味もあり、別の先生と二人で担当している。15人中男子は一人で、担当クラスは女子のみ7名。それぞれ2時間連続の週1回の授業で、うち1時間は日本人教師が単独でビデオを使ってのリスニング中心の授業(テキストはOnly in America, Oxford)。もう1時間はAETとのteam teachingでプリントを使用。講座名はオーラルAになっているが、オーラルC的なものを目指している。

(2)  上演まで
◆1学期の授業での仕込み:意識的に4月~5月の授業で声を出すことの楽しさを実感させる。徹底的にほめて、その気にさせることがコツ。「ふつう」の授業では生きていない音声を感情を込めて言ってみる楽しさを体験するとともに、クラス作りにも役立てる。
[参加者とワークショップ形式で行いました。]
 1. ペアワークで「1度目は感情を入れず読む。2度目は感情を込めて読む」
a. What a beautiful sunset!
 b. Watch out! Itユs hot!
c. I'm bored and sleepy.
 d. He's terrible! I hate him.
 2. 3人で「指示された感情を込めて読む」→相互評価
a. Going, going, gone! It's a homerun! (loudly)
b. Leave me alone, will you? (angrily)
c. Whatユs the matter? You look pale. (anxiously)
d. Hurry up! Weユll miss the bus. (impatiently)
e. That's a funny story. Ha-ha-ha. (laughing)
 3. ペアワークで「適した声と表情で読む」
a. Paul, hurry up! The busユs leaving! (Takeshi shouted.)
b. I'm sorry to hear about your father's death.
c. The first prize winner is (Takeshi Suzuki.)
  Who? Me?! (Takeshi said in surprise.)
・「ささやき」作戦で英語劇をやる生徒を増やしていく。
 ここでリーダーになりそうな生徒を通じて声をかけていくのが常道。
・7/3 放課後会合 上演候補作品の提示、その後、放課後会合 上演作品の決定
・7/19(終業式)放課後会合 台本version 1の配布、配役の仮決定
・7/31 配役最終決定、練習:主として、セリフを覚えながらの通し読み
・8/10 練習 8/21 練習(この日より体育館ステージにて) 8/31 練習
◆2学期開始:授業で練習(9/13、9/20)。生徒が2クラスに分散しているため、クラスをくずして英語劇に出る生徒を萩原とブランドンで指導。残りはもう一人の教員が授業。
放課後は個別に発音のチェックと矯正を行った(本格的にやったのは今年が初めて)。
・9/15 午前中練習(視聴覚室で) 9/18-19 一部生徒で小道具作り(金庫)
・9/20-21 放課後、音響の選定。音響の決定と録音。
・9/22 全日準備(体育館でリハーサル)朝7時30分より練習
・9/23 文化祭当日(第1回公演)(体育館で7時より練習)
・9/24 文化祭当日(第2回公演)

●『ジミーバレンタイン』(原作O・ヘンリー A Retrieved Reformation「よみがえった良心」)
生徒作成のチラシより抜粋:「昔、金庫破りをしていたジミー・バレンタインは、アナベルという女性に会い、金庫破りを辞めラルフ・スペンサーとして、新しい人生を歩んでいた。そんなある日、アナベルの姉の子どもがあやまって金庫にとじこめられてしまうという事件が起こる。助ければ過去がバレ、町に来ている刑事ベン・ブルースに捕まってしまう。
どうする、ラルフ?! どうする、ジミー!!」
*体育館が空(運動部の練習がない状態)で練習できたのは、2回のみ。
*音響は担当生徒2名でいろいろなものを聞きながら、BGM、映画音楽でよさそうなものにしぼっていった(相当時間がかかる)。
*小道具、大道具は金庫くらいが大がかりなもので、あとは生徒の持ち寄り。
*衣装は基本的に各自で考えさせた(作った生徒は一人)。

(3)  今年の特徴
・受講者15人のうち、7人しか希望者がいなかったので、人数的に苦しい展開となった。
・特に照明・音響の人員確保が直前までできず、リハーサル1回のみで本番にのぞんだため、ミスがかなり出て、役者が演技に集中できない様子が見られた(特に2回目公演)
・全員が女子のため、人間関係が難しい。
・生徒の英語レベルは総じて高く、真面目な生徒ばかりで練習をすっぽかすようなことは   なかった。リーダー格の生徒がいたこと。
・OBが8人も見に来てくれた。(英語劇が機縁でOBの集まりがたまにある)

(4)  4年間 《生徒が語る英語劇で得られたこと》
・劇のせりふで使った表現が身についた(使えるようになった)。
・英語を話すことに対する抵抗感があまりなくなった。
・英語は日本語のように遠回しな言い方がなく、ストレートに言えるので気持ちよかった。
・出そうと思えば、大きな声が出せると分かった。
・苦手だった英語を話すときのジェスチャーやリアクションに対する苦手意識がなくなった。
 年度 上演作品 人数/特徴
1997 Enoch Arden 7人。教室で上演。人数が足りず舞台づくりに時間がとられ、
  『イーノック・アーデン』 リハーサルができず。チームワークは最高によかった。
ダニエルさんの援助大。3回公演。「自由参加大賞」獲得。
1998 Cinderella 10人。体育館で初上演。図抜けた力をもつ生徒はいなかった
    『シンデレラ』 が、リーダー格の生徒がおり、すべて生徒まかせでできた。
練習熱心で練習回数は抜群。ダニエルさんの援助大。2回公演。
1999 Run, Melos 10人。メンバーはばらばらで、最後までできるか不安。主役の
    『走れメロス』 二人の生徒の力が抜群で、何かできる目算はあった。1回公演。
2000 Jimmy Valentine 7人。生徒が真面目で英語力の伸びをもっとも感じること
  『ジミーバレンタイン』 ができた。メンバーは女子のみで2回公演。
■レポーターの感想
 □ いやぁ、何たる失態。ビデオテープを間違って持ってきてしまい、皆さんにたいへんご迷惑をおかけしました。おわびのしようもありません(12月例会で休憩時間にでもかけさせてください。よろしければ…) 英語劇をずっとやってきて、生徒の成長を見てとれるので本当にやってよかったと思っています。

■意見:観客に英語劇の内容をどのように分からせるか?
 (1) あらすじをチラシであらかじめ紹介。劇のパート1で日英通訳方式であらすじを誰にでも分かるように工夫。
 (2) 「授業の1つの到達点」と考えれば全員にわかってもらうというよりも、発表の場として考えるべき。
 □ 歌、踊りなどを取り入れてミュージカル形式なども考えられるのでは。

■参加者から出された感想
 □ 4年目の実践、ビデオで見られなかったのは残念ですが、続けてきたことで生徒の力が伸びていると感じました。英語科も1年のイベントを設けてそれに向けてやる授業があるとはげみになるし、計画性が出てくると思う。Recitation、Speech、Musical など、生徒の発表を見たいですね(1人ひとりに発表の場を!)。ワークショップでの感情を取り入れたペアワークが楽しかったです。
 □ 英語劇4年連続しての実践ということで、生徒の間でも代々受け継がれているような良いものになってすばらしいと思いました。ワークショップは気分がほぐれて楽しめました。
 □ 英語以上のものを得られるような活動で羨ましいと思いました。私が生徒の時にこのようなものがあったら、と思いましたが、やはり受験勉強にまっしぐら…なのでしょうね。
 □ 劇をオーラルで取り組むという授業は初めてでしたので新鮮なものに感じました。生徒が1つの長い物語のセリフを覚え、人の前で発表する授業は生徒の力にもなるし、自信をつけるためにもやってみるとおもしろいなあと思いました。voice communication feelingはぜひやってみたいと思います。
 □ 毎年たしかな授業の枠組みがあってこそ、それぞれの年の生徒の気質を受けとめる余裕も出てくるのでしょうね。
 □ ワークショップがとてもおもしろかったし、うちの生徒でもすぐ使えそう。
 □ ビデオが見られなかったのが大変残念でしたが、ワークショップがとても楽しかったです。また機会があったら是非また実践を積んでみてください。シリーズものとして楽しくお話を伺えました。
 □ 英語劇、観客には分からなくても、演じた生徒が達成感が大きく、思い出に残ると思います。何回も練習して暗記し発表するのは活動の集大成になるでしょう。自分も中学の時やった英語劇を覚えていますから。


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